文字をタイプする楽しさを覚えたのは、母が大切にしていたワープロ(ワードプロセッサ)を初めて触らしてもらったときのことだったかな。ワープロはプリンターが本体に内蔵されていたこともあってか、とても大きくて重たかった印象がある。
それから間もなくして我が家にもパソコンがやってきた。しばらくの間はワープロも年賀状専用機として活躍していたが、パソコンに慣れてからはすっかり使われなくなってしまった。
それからどれくらいの月日がたっただろうか。ある日のこと、家電量販店の一角でワープロのようなものと再び相見えることとなった。ポメラDM10である。
当時の店員さんの話を今でも覚えている。彼は「ただ文字を打つことしかできない機械ですよ」とどちらかというと消極的に紹介してくれた。今思えばそうした姿勢も当然だなと感じる。ほとんどの若者であれば、こんな単機能なものに関心を寄せるはずがないから。だけどね、一目惚れだったんだ。
さすがに衝動買いこそしなかったけれど、しばらくしてポメラDM10は我が家にやってきた。それはまさに小さくなったワープロだった。ただ文字をタイプすることに対する喜び、それが確かにそこにはある。パソコンのWordで文字を打つのとはまた違う感覚。ただ、わたしの文字だけが目に入る幸せ。
生まれてきてくれてありがとう……
2020/6/15